本格運用目前 政府は合意違反指摘せよ


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 米軍普天間飛行場に移駐した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて在日米軍司令官が12月上旬にも本格運用を開始すると表明した。強行飛来から現在までの2カ月は正式配備前の慣熟飛行だ。予備的な訓練段階で日米合意の安全確保策がことごとく踏みにじられてきた。本格運用になったら、どれほど訓練が激化するのだろうか。多くの県民が不安を抱いているはずだ。

 軍内部の評価基準に基づいて練度や整備状況などが基準を満たし、部隊が任務を完遂できると判断された段階で完全な運用能力を保持したと認定されるようだ。その時点から本格運用が始まる。合意違反を繰り返し、住民に対する安全確保を置き去りにして駐留を既成事実化することは許されない。
 県と市町村が実施している目視調査では安全確保策を逸脱した飛行が相次いで確認されている。飛行場の外では回避されるはずのヘリモードで住宅密集地を飛び、できる限り短くする転換モードで民間地を飛び続けている。飛行しないはずの午後10時以降の深夜飛行も6回確認されており、伊江島では「着陸帯として利用しない」としていたコーラル滑走路でタッチアンドゴーを繰り返している。米軍は日米合意を守るつもりなどないとしか思えない。
 回避するはずの病院や学校上空の飛行も常態化している。名護市の久辺小運動場の上空を何度も飛行したため、学校から授業に支障を来しているとして飛行中止を求める声が行政側に寄せられている。普天間第二小では離陸時に防音窓を閉めた教室内で環境影響評価書で定めた基準値を超える低周波音が記録された。子どもの学ぶ環境を脅かす飛行など許されない。
 これほど安全確保策をないがしろにして住民生活を脅かしているにもかかわらず、森本敏防衛相は合意違反はないとの認識を示している。制限事項の多くに「できる限り」という一文があるからだろう。そうだとしたら安全確保策など県民にとっては何の意味も持たない。
 野田佳彦首相は予算委員会で「米国は合意を順守し、安全性などに最大限配慮していると認識している」と述べた。県民の声には耳を傾けず、なぜ対米追従を繰り返すのか。なぜ米軍の合意逸脱に抗議しないのか。オスプレイの本格運用は到底容認できない。沖縄から撤収すべきだ。