オスプレイ2ヵ月 違反繰り返し法治国家か


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 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが沖縄に配備されて2カ月が過ぎたが、あまりにも多くの違反が繰り返された。日米両政府がどう言い繕おうと、データから違反ぶりは明らかだ。
 飛行実態は、配備直前に日米間で急きょ取り交わした安全確保策(日米合同委合意)に反しているだけではない。普天間と嘉手納両基地の騒音防止協定にも背いているのだ。

 合意違反、協定違反を繰り返して法治国家とは言えない。両政府は直ちに配備を撤回すべきだ。
 既にオスプレイは本島中をくまなく飛び回っている。宜野湾市上大謝名では80デシベル以上の騒音を10、11両月で592回も記録した。80デシベルは「騒々しい工場内」に匹敵する。それを1日に10回も味わわされる住民の苦痛を、政府は想像してもらいたい。しかもその苦痛はいつ果てるともしれないのだ。
 あろうことか11月19日には100・6デシベル、26日には101・3デシベルも記録した。これは「電車通過時のガード下」に匹敵する。オスプレイ配備前の主力ヘリは70デシベル台だから、騒音被害激化は明らかだ。
 合同委合意は「人口密集地上空を避けて飛行」「基地内のみヘリモードで飛行」と規定するが、県に寄せられた目撃情報465件のうち市街地上空は6割に上り、しかも多くがヘリモードの目撃だ。これで「米国は合意を順守している」(野田佳彦首相)「明示的な合意違反はない」(森本敏防衛相)などとよく言えたものだ。
 合意に「できる限り」などと抜け道が用意されているから、「違反ではない」という理屈だろう。一般にはこれを「詭弁(きべん)」と言う。
 騒音防止協定は午後10時~午前6時の深夜・未明は飛行しないと規定するが、この時間帯の飛行も2カ月で計11回に上る。これも「運用上必要なものに制限」と抜け道を用意しているからだろう。
 沖縄の空の無法状態は歴然としている。主権国家であるなら日本政府は毅然(きぜん)と対応すべきだ。
 忘れてならないのは、そもそもこの配備が私たち県民の明示的な総ぐるみの反対を押し切ってなされたことだ。騒音が多少減れば済む話でもなく、合意を守れば済む話でもない。
 本来、この空に何を飛ばすかは県民が決めることだ。県民は「空の主権」を放棄してはいない。それを否定するなら、両政府は民主主義の標榜(ひょうぼう)をやめてもらいたい。