アルゼンチンアリ 辺野古移設で生態系壊すな


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設で埋め立てに使用する土砂(岩ずり)をめぐり、土砂採取予定地周辺で飼育や運搬が法律で原則禁止されている特定外来生物のアルゼンチンアリが繁殖している実態が明らかになった。

 アルゼンチンアリは日本では1993年に広島県で初めて確認され、その後、全国的に生息域が拡大している。繁殖力が旺盛で駆除が難しく、外国ではサトウキビ食害も確認されているという。移入した場合、狭い沖縄では自然の生態系だけではなく、農業も含めた生活環境への影響も一層懸念される。
 辺野古沖埋め立てには、県庁舎70棟分にも上る大量の土砂が投入される。8割は県外からだ。アルゼンチンアリなどの外来種混入はないと、誰が言い切れようか。
 沖縄防衛局は調達土砂に外来種が混入する懸念を示した県の質問に対し、生態系への影響を防ぐ対策は防衛局の責任で土砂供給業者が実施すると説明している。
 あまりに抽象的で、無責任すぎる。いったいどうやって、大量の土砂への外来種混入を点検するというのか。努力目標を示して済むような問題ではない。
 辺野古埋め立て申請手続きの環境影響評価(アセスメント)への知事意見は「机上の予想を超えた影響が懸念される」と指摘している。アルゼンチンアリはまさにその類いだ。実効性のある対策が見えないまま、土砂搬入・投入が認められていいはずがない。
 外来種が環境や生態系にいかに深刻な影響を及ぼすかということを、県民はマングースやマツクイムシなどの事例で実感している。アルゼンチンアリはいったん移入すると被害は計り知れなく、対策コストも相応なものになろう。
 初めから外来種混入の恐れがある土砂を持ち込む愚を冒すべきではない。別の場所から土砂を調達したとしても、外来種混入の危険性は消えない。そもそも大量の土砂を投入すること自体が、ジュゴンなど貴重な生物がすむ海洋環境、生態系を破壊する恐れが強いのだ。
 固有の生態系と生物多様性を守る取り組みは国際的にも重要な課題だ。環境面から見ても、辺野古移設計画はずさんで、既に破綻していると言わざるを得ない。
 仲井真知事はこの土砂問題一つ取っても、断固として、埋め立て許可申請をはねつけるべきだ。