脱法ドラッグ摘発 根絶へ監視・啓発の強化を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 九州厚生局沖縄麻薬取締支所や県警などの合同捜査本部が違法な指定薬物(脱法ドラッグ)を中国から輸入した薬事法違反容疑で、本島中南部に住む男4人を逮捕した。

 捜査本部は荷受先のマンションの家宅捜索で脱法ドラッグの原料とみられる粉末や植物片、密造に用いたとみられる器具や溶剤など約800点の証拠物件を押収した。
 捜査当局はこの薬物の輸入経路や密造の経過・規模、販路、県内への拡散状況など、全容解明に全力を尽くしてほしい。
 脱法ドラッグの成分や含有量は商品によってまちまちだ。使用後の嘔吐(おうと)、意識障害、幻覚・幻聴、疲労感など健康被害が全国で後を絶たない。死に至った例もある。
 県内では2012年3月、脱法ドラッグを吸引した男が多重事故を起こして4人に重軽傷を負わせるという事件が記憶に新しい。
 脱法ドラッグは「合法ハーブ」「お香」などと称され、店頭やインターネットなどを通じて入手が容易なことから、若者を中心に乱用が広がっている。今回逮捕された4人は、密造した脱法ドラッグをネットなどを通じて東京、大阪など全国30数カ所に販売し、数千万円を売り上げたとされる。
 これは人ごとではない。正しい知識がなければ、一般の市民が被害に遭わないとも限らない。家族や友人、知人が安易に違法薬物に手を出し、人生を台無しにしないよう目配りも怠らないでほしい。
 脱法ドラッグについて、厚生労働省は当初、個々の成分ごとに指定薬物に定め、薬事法で製造や販売、輸入を禁止していた。しかし、成分構造の一部を変えた物がすぐに出回り、規制が後手に回ったため、現在は基本構造が似たグループをまとめて規制する「包括指定」の仕組みを導入している。所持や使用も禁じる改正薬事法の施行で、今年4月1日からは買う側も処罰対象となっている。
 脱法ドラッグの製造・販売、所持・利用の根絶に向けて、関係機関は連携、監視を強化してほしい。
 教育現場での啓発も重要だ。脱法ドラッグの有害性について「明確に説明できる」のは小中高教師の7・2%という、民間団体「日本薬物対策協会」の最近の調査結果もある。これでは児童生徒を違法薬物から守れまい。薬物乱用の危険性や防止策を周知徹底する学校現場の態勢づくりが急務だ。