児童ポルノ禁止 野放しの現状 是正したい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 児童ポルノの所持規制を強化する児童買春・ポルノ禁止法改正案が近く成立する。性犯罪被害から子どもたちを守る取り組みは急務と言えよう。

 改正案は性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ写真などを所持した場合、1年以下の懲役や100万円以下の罰金を科すと定める。
 児童ポルノの定義を厳格にするため、「殊更に児童の性的な部位が露出されまたは強調されているもの」と明記。盗撮による児童ポルノ作製を罰し、インターネット関連事業者に捜査機関への協力や拡散防止の措置を取ることも求めている。
 子どもを写したわいせつな写真や映像などの児童ポルノは、1999年に超党派の議員立法で成立した児童買春・ポルノ禁止法で、「18歳未満を撮影した、性欲を刺激する写真・画像」の製造や販売が規制されている。一方で、個人的な所持は、議論の末に、規制対象外とされた経緯がある。
 だが子どもが巻き込まれる犯罪は後を絶たない。昨年1年間の児童ポルノの全国摘発件数は前年比48件増の1644件。6年連続で過去最多となり、被害者は646人に上る。携帯電話などを通じて被害に遭う事例も目立ち、県内でも被害が報告されている。
 先進7カ国(G7)で、児童ポルノを個人が趣味で持つ「単純所持」が黙認されているのは日本だけで、国際的にも「児童ポルノ天国」と批判されていた。ネット上から海外に児童ポルノが拡散している事例もある。野放しの現状は早急に是正しなければならない。
 ただ規制対象や手法には曖昧な点も多く、法改正には「捜査権の乱用を招きかねない」との懸念も根強い。捜査機関側にも今後の凶悪事件捜査に関し「殺人容疑で逮捕状が取れなくても、違法画像が見つかれば逮捕できる」(警視庁幹部)との思惑があるとされる。恣意(しい)的な運用を防ぐ手だてが必要だ。
 改正案は漫画やアニメなどは規制の対象外としたが、作家やジャーナリスト、出版業界などは「表現者を萎縮させ、自由な表現を後退させる」(日本雑誌協会などの声明)と法改正に反対している。
 悪質な事例には厳正に対処して子どもたちの権利は是が非でも守るべきだ。一方で捜査が適正か否か、市民が監視できるような仕組みを確立すべきだ。