<社説>しまくとぅばの日 復興は自尊心も取り戻す


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2006年の県議会での条例制定以来、8年目となる「しまくとぅばの日」を迎えた。この間、保存・継承に向けた関係団体や行政などの取り組みも年々活発化しているが、宮古・八重山や奄美などを含めた琉球諸語が危機的な状況にあることに依然変わりはない。

 指摘するまでもなく、先人から連綿と受け継いできたしまくとぅばは、ウチナーンチュが歴史を生きてきた証しである。沖縄のアイデンティティーや自尊心とも置き換えられよう。きょう9月18日はしまくとぅばについて、県民があらためて深く考える契機としたい。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は09年、世界で現存する6千前後の言語のうち、2500の言語が消滅の危機にあると発表した。六つの琉球諸語が消滅の危機にあると認定されており、保存・継承の取り組みは待ったなしだ。
 こうした危機意識を共有するかのように、国際的な組織である危機言語財団の第18回大会が17日、3日間の日程で宜野湾市で開幕した。絶滅の危機にある言語を研究し、認知度の向上や記録保存、普及活動を支援することを目的としており、東アジアでの開催は初めてとなる。
 沖縄にとって、危機言語に関する世界各国の知見や保存・継承に向けた先進的な取り組みを学ぶ意義は極めて大きい。併せて、しまくとぅばに関する現状認識を深めるとともに、国際社会に対し、言葉が育んだ文化や歴史など沖縄の独自性を発信する意義もまた計り知れない。
 実際、しまくとぅばの保存・継承活動は盛んになりつつあるが、いまだ手探り状況を抜け出せていないのが実態だ。学校教育への導入や表記方法、県内各地のしまくとぅばの継承など課題は山積する。同財団の沖縄大会では、今後につながる成果を期待したい。
 一方、県民の間にしまくとぅばの保存・継承の機運が高まっている背景には、政府による辺野古基地建設強行など、沖縄が置かれている現状とも決して無縁ではないだろう。「琉球処分」以降、しまくぅとばが片隅に追いやられたように、辺野古強行は沖縄のアイデンティティーを否定し、自尊心を傷つける行為にほかならないからだ。
 しまくとぅばの復権・復興は、沖縄と本土との在り方を考える契機にもなると認識したい。