<社説>先島陸自配備 軍事要塞化認められない


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 防衛省は宮古島への陸上自衛隊警備部隊の配備地として宮古島市平良の大福牧場周辺と同市上野野原のゴルフ場千代田カントリークラブ周辺の2カ所を有力候補地として絞り込んだ。左藤章防衛副大臣がきょう11日午前に同市を訪れ、下地敏彦市長と会談し、配備を正式に打診する。午後には石垣市を訪ね、中山善隆市長に同部隊配備に向けた調査への協力を求める。

 防衛省は先島の2島を「島しょ防衛の初動任務の拠点」にする考えだ。しかし部隊配備が本当に必要なのか。いたずらに軍事衝突を引き起こす火種となる拠点を設置するようにしか思えない。
 防衛省は18年度までの中期防衛力整備計画で「沿岸監視部隊や初動を担任する警備部隊の新編等により、南西地域の島しょ部の態勢を強化する」と記した。沿岸監視部隊は与那国島で駐屯地建設が進み、警備部隊は奄美大島、石垣島、宮古島への配備が計画されている。
 さらに警備部隊には隊員だけでなく、陸自地対艦ミサイル(SSM)、地対空ミサイル(SAM)も配備される可能性がある。ミサイルが配備されれば、当初の350~400人規模の部隊は550人以上に膨れ上がる。防衛省は現時点で具体的な配備地、ミサイル配備の有無などの情報を明らかにしていない。島民、県民が知らぬ間に、軍備増強が勝手に決められ、進められることは許されない。
 警備部隊が担う初動任務とは、武装集団による離島への上陸などの事態が起きた場合の最初の武力行動を指す。離島奪還という名目で島が戦闘状態となり、住民が巻き込まれて犠牲になるのは沖縄戦で証明されている。
 昨年6月に宮古島市を訪れた当時の武田良太防衛副大臣は、市長に配備適地調査への協力を求めた席で部隊配備の目的を「住民の安全を確保する」と述べた。果たしてそうだろうか。
 沖縄戦では米軍がサイパンでの戦闘後、日本本土への攻撃に向けて沖縄を拠点にしようとした。日本軍は本土決戦を先延ばしにする時間稼ぎとして沖縄での地上戦を繰り広げた。沖縄住民を犠牲にした「捨て石」作戦だった。
 戦後70年を迎え、再び本土防衛の「捨て石」になりかねない沖縄の軍事要塞(ようさい)化を認めるわけにはいかない。陸自部隊配備は白紙に戻すべきだ。