<南風>子どもたちのために


社会
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 世界チャンピオンたちは子どもたちのために活動する―。これは2006年に当時のWBC(世界ボクシング評議会)のホセ・スレイマン会長によって設立された「WBC Cares(ケアーズ)」の活動理念。

 参加メンバーは166カ国に広がり、世界各地でチャンピオンたちが学校・病院・被災地・孤児院・青少年センターなどを訪問し、逆境に直面している子どもたちを励ますため、物資やメッセージを届ける活動を積極的に行っている。

 昨年10月、日本でこの活動がスタートした。コロナ収束の見通しが立たず、多くのスポーツ競技が試合・トレーニングの機会を失い、モチベーションの維持が難しい状況に陥っていた時期。子どもたちも同様で、スポーツへの興味の喪失が憂慮された。この状況を打破すべく、世界チャンピオンたちによるボクシング教室やスパーリングクリニックを11月に佐賀県、今年3月に沖縄県で催した。

 世界チャンピオンたちは挫折や失敗も経験しながら頂点に上り詰めた存在。ただ強いだけではなく、スポーツマンシップや尊敬の心、勇気を兼ね備えている人たちだからこそ、経験から発せられる言葉にはパワーがある。「目標に向かって頑張ることの大切さや諦めない心、困難に挑む強い気持ち」は、子どもたちはもちろん、私たち大人にとっても心に響くメッセージだ。

 WBCケアーズジャパンは、ブラインドボクシングや車いすボクシングといったハンディキャップがあっても楽しめる生涯スポーツボクシングの普及にも力を入れる。日本では、故・白井義男さんから始まり、世界の主要4団体で男子94人、女子26人のチャンピオンが誕生している。日本では始まったばかりだが、WBCケアーズジャパンの実行委員として、多くのチャンピオンと共に活動を広げていきたいと思う。
(平仲絢子、平仲ボクシングスクールジム マネージャー)