<南風>家庭を築きたい


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 パートナーからの突然の別れの言葉は「結婚」というどうすることもできない理由だった。私が男性なら、20代の頃、7年間同棲をしていたパートナーと結婚ができたかもしれない。この時ほど自分が女性という性に生まれたことを悔やんだことはない。

 結婚という選択はないもので、望んでも無駄だと思い生きてきた。しかし2019年に国が同性婚を認めないのは、婚姻の自由を保障する憲法24条、法の下の平等を保障する憲法14条に違反しているとして、複数都市で同性カップルが一斉に提訴していた。

 その中で札幌地裁が、同性カップルの法的権利の保護がまったくなされていない現状について、憲法14条1項に違反すると画期的な判決を下す。

 この憲法14条1項には、全ての国民が「法の下に平等」で、みんなが大切にされ、差別されることはないとされている。この判決は、当事者の希望となり、今後、同性婚の法制化に大きな原動力となるだろう。

 同性婚について世界に目を向けると、19年に台湾がアジアで初となる同性婚の法制化を実現した。なお、主要7カ国(G7)のうち同性婚を認めていない国は日本だけである。日本の現状は、自治体でパートナーシップ制度導入の動きが広まってはきているが、この制度では男女の夫婦と同じ法的な保障はない。長年、共に暮らしていても戸籍上は他人のままであるので、不都合が生じることも多くある。

 同性婚を認めることに反対意見もあるが、異性婚の権利、義務を奪うこともなく、異性愛者の生活も変わることはない。

 家族のカタチ、幸せのカタチは人それぞれ多様にある。「家族とはこうあるべきだ」という旧来の伝統的な家族観を更新するときが来ているのではないだろうか。

(畑井モト子、琉球わんにゃんゆいまーる代表理事)