<南風>かなえたい夢


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「今後の夢は?」。地元に戻り会社を設立し、なんだか地域にとって新しい取り組みをいろいろ仕掛けている人、ということで名前が独り歩きしがちな私は、よくこの質問を受ける。そして決まって返答に困ってしまう自分がいる。

 振り返るといつもそうだった。高校や大学といったこれからの自分に関する選択を迫られた時、これといった自分自身の夢や目標を持って、それまでの日々を過ごしていたわけではなく、とにかく目の前の面白そうなことに飛びついてきただけの日々だったことに気づき、そんな3年後、5年後、10年後の自分なんて考えられないよと途方に暮れてしまうのを繰り返してきた。

 それは今も変わっておらず、さまざまな人と出会いながら、いろんなプロジェクトに関わりながらも、じゃあ、その先に成し遂げたい自分の夢はあるかと聞かれると、すぐに出てくる答えはない。ただ一つ、これを夢と呼んでいいのであれば、明日も、明後日も自分として楽しく生きたい。

 これまで何度か自分を辞めたいと思うことがあった。今日も自分として目が覚めることに1ミリも気が乗らず、その時の私は、歩いていても食事をしても人と話していても自分の目線はずっと足元を見ていて、顔を上げるということすらできない状態になっていた。

 自分が何者かずっと分からずにいた過去を振り返ると、自分として楽しく生きるということは、私にとっては夢であり、保証されていない明日に対して毎日描き毎日かなえているという事実が自分の自信にもつながっている。

 こうして、いざ頭の中で考えていることを文字にしてみると、あまりにも自分本位な夢で、言葉にするのはなんだか恥ずかしく感じるが、今日も夢をかなえるために、そんな感情ですら受け入れていきたい。

(岩倉千花、empty共同代表)