<南風>架け橋を渡る人


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先日、6月24日に琉球新報ホールで開かれたシンポジウム「第2回沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」に参加するため帰省し、第2部「経済トーク」のコーディネーターを務めた。同時通訳の音響機材にトラブルが起こり、パネリストの一人の発言を私が逐次通訳するというハプニングがあったが、進行に大きな影響はなかったと思う。

 登壇した3人のパネリストは福建、台湾、沖縄出身の企業経営者で、経営する分野もフィンテック(金融+IT)、経営コンサルタント、貿易と三者三様。それぞれが異なる視点でこの地域の経済連携や沖縄の目指すべき方向性について語り、実践を踏まえた説得力のある提言が出された。まず沖縄自身の特徴を理解し、次に周辺の国・地域の状況を把握し、その上で自分と相手の違いや共通点を認識して連携を図っていくことが重要だと強調された、非常に意義深いトークセッションだった。

 シンポジウム終了後は母校の沖縄国際大学で行われた校友会の総会に出席した。総会では「国際支部」の設立が満場一致で了承された。私が在学していた約20年前も中国、台湾、マカオ、韓国、タイ、アイルランドなどの国・地域から来た留学生が共に学んでいたが、今回の国際支部の設立を契機として、今後「国際」の名を持つ大学にふさわしい交流が展開されることを期待したい。

 今回はこれら二つの会合に参加し、世界に向けて飛躍しようとする沖縄の胎動を感じることができた。沖縄には「万国津梁(しんりょう)」、すなわち世界の架け橋になるという言葉があるが、橋は渡る人がいて初めて意味をなすものだ。中国の文豪魯迅(ろじん)は「地上にもともと道はない。歩く人が多くなればそれが道になる」と説いている。橋を渡り、道を創る沖縄の人がますます増えることを心から願っている。

(泉川友樹、日本国際貿易促進協会業務部長)