<南風>全乳幼児の成長を保障


社会
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 子どもの成長が最も著しいのは乳児期(1歳未満)で、その次が幼児期(1歳から就学前)である。全乳幼児の成長を見守る3~4カ月、8~9カ月、1歳6カ月、3歳の乳幼児健康診査(以下「乳幼健」と略す)は、子どもの大切な成長のマイルストーン(重要な節目)である。乳幼健では疾病の早期発見とともに、年齢相応の身体的・精神的発達を確認しながら、育児支援につなげている。

 復帰当時、小児科医は少なかったが、質の高い乳幼健を確立するため、有志(小児科医、保健師)で小児保健協会を創設し、小児科医の確保、研修会やマニュアルの作成を行った。乳幼健の医師には、短い時間で的確な診断や評価が下せる小児科医に限定した。

 1974年から厚生省の派遣医制度を活用し、本土の高名な先生方による宮古・八重山の先島乳幼健を15年間継続できた。81年からは県内全ての有人離島で本島と同等の乳幼健を小児保健協会の協力で実施している。さらに歯科医、歯科衛生士、栄養士、公認心理師なども加わり、一度に多職種で支援できる集団形式の乳幼健は、沖縄方式として健診のモデルとされた。

 コロナ禍前の乳幼健の受診率は90%を示していたが、コロナの影響で他の健診・検診同様大幅な受診率低下が予想された。しかし市町村の乳幼健担当者の努力で85%近くを保持できたことは称賛に値する。

 少子化時代には誰一人取り残さないことが特に重要で、全ての乳幼児へのアプローチが必要だ。乳幼健を活用すると、支援が必要な家庭が早期に掘り起こされる。特に乳幼健を受診していない場合、受診できない理由を明らかにし、子どもの成長に大きな影響を与える「貧困や虐待」の発生予防が可能となる。全ての子どもの成長を保障するために乳幼健は「こどもまんなか社会」に必須である。

(宮城雅也、県小児保健協会会長)