<南風>コーチングの原点


社会
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 「知加さんはこの会社で何を実現できたら最高?」。新卒入社の会社で上司に聞かれた。営業職として入社して3カ月。お客さまとのアポが1件も取れず、約800人いる営業職の中で最下位だった。穴があったら隠れたいを通り越し、いなかったことにしてほしいほどの恥ずかしさと自分の無能さに嫌気がさした。

 そんな私を見かねてか、上司が毎日面談しようと言う。時間は約10分。最初は面談と聞いて、説教されるんだろうなと予想していたが、始まってみると上司が話すのではなく、私にたくさんの質問をしてくれた。

 ただ、当時の私は、何を答えたら正解なのか、こんなことを言ったら嫌われるのではないか、とフィルターが入り自己開示をすることができなかった。

 それから2週間たったころ、上司が自分の話をしてくれた。新人時代の営業での苦戦や、私を採用した理由を話した後、「知加さんはこの会社で何を実現できたら最高?」と尋ねてきた。その時、初めて「全国1位を取りたい」と自分の気持ちを正直に伝えられた。上司の自己開示により、この人なら自分の気持ちを受け止めてくれるかもしれないと思えたからだ。

 それは正解だとすぐに気づく。上司から「知加さんなら絶対にできるよ」と言ってもらえた。自分の可能性を信じてくれる人がこの世に1人でも存在すると認識できたことが自信につながり、これまで見ていた世界が180度変わった。

 それから「全国1位」を目標に今、自分ができる最善を尽くした。結果、この年の売上全国1位を獲得でき、翌年には部下が新人賞を獲得してくれた。これが私のコーチングの原点である。この上司に出会えた私は本当にラッキーだと思うが、これが当たり前になれば、みんなの人生がより豊かになれるのではないか。そんな期待感で胸が弾む。

(福島知加、ワダチラボ代表取締役)