<南風>恐怖のラスト1ピリオド


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 大型連休に突入した。高校総体に向けて、チームに弾みをつける大切な時期だ。県内外合宿を行う部活動も多いだろう。

 県外合宿は、競技力の向上だけでなく礼儀作法や練習に取り組む姿勢など、選手はもちろん指導者自身も自己の意識を高める絶好の機会だ。特に選手は、同世代の県外選手から良い刺激を受け、チームや個人の課題に気づく。明確になった課題を解決するために、自ら考え行動するようになる。それほど有意義な県外合宿だが、私にとって厳しく苦しい、忘れられない思い出がある。

 高校生になって初めての県外合宿。期待や不安を感じる時間もないほどの日程の中、練習試合が終わり、監督の表情が曇っていた。本県チームのプレーに納得しない監督は、もう1ピリオド対戦してもらうよう言った。やっと、そのラスト1ピリオド(と私たちは思っていた)が終わったら、今度は相手チームの選手がラスト1ピリオドをお願いしに来た。ラスト1ピリオドの繰り返し。双方の監督を見ても、一向に終わる気配がない。体力の限界に近づき疲れ果てていると、宿舎のバス運転手の方がしびれを切らしてプールにやって来た。帰りのバスに乗り込む時間がとうに過ぎていたからだ。ものすごい剣幕で怒られたが、やっと帰れると、救いの手を差し伸べてくれた天使に見えた。

 しかし、嫌な予感は的中するものだ。翌日から、宿舎のバスは私たちをプールに送るのみ。迎えはなく、ラスト1ピリオドが延々続いた。プールに照明設備があると、選手の心は真っ暗だ。日が暮れても練習が続くのだ。

 最近はこのような光景は見られない。時間を決め、目標を示しながら練習することの効果を私も十分理解している。ただ、時々思う。この粘りが、苦しい時のもうひとかきを生むのでないかと。
(永井敦、那覇西高校水球部監督)