コラム「南風」 天才タイプの取り扱い


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 陸上競技では、選手のレベルが記録でランク付けされ、自分が県や全国で何位に位置しているか一目瞭然。1位から最下位まで、厳しい現実を突き付けられます。そのため、みんな日ごろから地道な取り組みを通して結果を求めています。99%の凡人タイプはそうしていると思います。

 ところが、ごくたまにそうではない人たちがいます。私が大学4年生のときの後輩のことです。彼は1カ月間も脚の故障で走れず、自転車で練習をしていました。凡人タイプの選手からすると、1カ月も走れないのは致命的なのですが、彼は国体の1週間前から走り始め、なんとその国体で入賞してしまいました。
 そのとき「天才ってこんな人のことだ」と思い知らされました。持って生まれた能力なので仕方ないかもしれませんが、「継続は力なり」「努力に勝る天才なし」などの言葉を励みに頑張っている人からすると、とてもショックです。
 指導者になってから1人だけ「天才タイプだな」と思う選手がいました。練習ではあまり走れないのですが、大会になると予想以上の走りをするのです。練習のタイムから大会で走るタイムがおおかた予想できるのですが、それがまったく当てにならない選手でした。
 また、こんな選手に限って他の選手と同じ感覚で指導すると走れなくなることがあり、片目あるいは両目をつむることもありました。99%の凡人タイプの見本になりませんが、指導者としていろいろ勉強になりました。
 個々にあわせた指導は1人でも大変なことです。学校にはいろんな意味で天才タイプの生徒がおり、人一倍指導者のエネルギーが必要となります。先生方も1クラスの定員数が減るだけで、天才タイプの生徒の指導にもっと関わっていけるのかもしれません。
(喜納敦(きなあつし)、県立北山高校教諭)