コラム「南風」 ランドセルの色


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 来年1年生になる息子に聞いた。「ランドセル何色にする?」息子「ピンク」「えっ? 男の子は黒とか青を持っている子が多いけど…」「おれは絶対ピンク」。これは一昨年の友人家庭での実際の会話。友人の息子はピンクが大好きで保育園のバックも自分でピンクを選んで通園していたらしい。私の息子から「おれはピンクが好きなんだからピンク。何でピンクじゃだめなんだ?」と問われたらどうするだろうか。その返答はまだみいだせない。

 ひと昔前と異なり、現在ランドセルの色は多様化し黒、赤、青、水色、ピンク、茶などいろいろある。男の子がピンクでだめな理由は何もない。しかし親として息子に「じゃあピンクね」と言えない自分がいる。その真意は、変な子と思われるのではないか、友達にからかわれるのではないか…など。そしてその背景には、大人の私が「男の子は黒か青でしょう」という固定化した考えがあるからである。
 今日、男女混合名簿、家庭科の男女共通授業、女子の体育着のブルマーの廃止など教育現場におけるジェンダー問題は少しずつ改善されてきている。しかし自由な選択と言いながらもランドセルの色のように大人が、そして社会が子どもに与えている固定的な性別による区別はまだ根強い。本来は全ての子が自由な選択ができること、そしてその選択をみんなが尊重し大切に育てていける学校、社会であってほしいと願う。
 さて友人の息子はというと、親がやんわりと説得し、どうやら青のランドセルに落ち着いたらしい。わが息子に聞いてみた。「何色のランドセルにする?」息子「黒でいいよ」。悲しいが、内心ほっとしている自分がいる。数年後、小学生の男の子、女の子の背中にもっともっとカラフルなランドセルがたくさん見られる光景があればすてきだろうな、と思う。
(村上尚子(むらかみなおこ)、弁護士)