コラム「南風」 当たり前を見直す


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 海人写真家として、執筆させていただいた「南風」コラムも、今回が最終回。それまでも、自然との接点で暮らしている海人などの世界を、写真と文章でつづってきたけれど、文章だけというのは初めて。試行錯誤しながら書き進めた。

 自分の連載を振り返って見てみると、「海」とそのつながり、「沿岸域」の大切さから、命について考えていることがよく分かる。
 さて、4歳児の質問。「なんで家を借りているの?」「このおうちは、誰のものなの?」。写真家の母と共に県内外の各地を巡るうちに、抱える疑問が他の子どもと違っているのかもしれない。そのことが幸か不幸かは、後にならないと分からないが。私自身は、そもそも土地にも海にも万物に神様が宿り、所有できるはずの無いものだと思っている。
 身の回りの当たり前と思い込んでいるさまざまなことを見直す―そこに、生きるヒントが隠されているのではないか? と思うようにもなった。人は、空気を吸い、生き物を食べ、眠り、次の日を迎える。食べものを得るために、協力し合い、働き暮らす。そんなシンプルなはずの人の社会が、なぜ、こんなに複雑になり、争いを繰り返し、生きる気力すら奪われる人が増えてしまうようなものになってしまっているのか? 子どもを抱えている母としては、考えずにはいられない。人の暮らしの原点に近づき、自分の目で確認し、体感して、自分の言葉で伝えられる人間になりたいとしみじみ思う。
 こんなことを考える貴重な機会を下さった琉球新報社さま、広い心でお付き合いいただいた読者の皆さま、本当にありがとうございました。これからも写真家として、あちこちで発信していきますので、どこかでお会いできたら、ぜひご感想などお聞かせ下さい。よろしくお願いします!
(古谷千佳子(ふるやちかこ)、海人写真家)