コラム「南風」 正月飾り


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 年末に、しめ縄を買おうとスーパーへ向かった。
 親元を離れてから、しめ縄や正月飾りなどを飾ったことがなく、正月らしいことをしてこなかったので、たまには何か飾り物でもしてみようと思い立った。あらためて見ると、実にさまざまな飾りが売ってある。どれも決して買えない金額ではないが、数日で処分してしまうことを考えると、何だか惜しくなってきた。しばらく思案にふける。

 豪華な飾りを手にレジへ向かうマダムを尻目に、私が購入したものは数百円の稲穂。これをアレンジしてオリジナルの正月飾りを作ってみようと考えた。自分のケチさ加減に半ばあきれつつ、お金がかからないナイスアイデアにウキウキしながら帰宅。その他の装飾用材料は家にあるもので間に合わせた。
 稲穂を二つの束に分け、リース風にしたごく単純な飾りであったが、手持ちの上等なちりめん古布をあしらうと、途端にぜいたくな気持ちになった。「賀正」と書いた札を下げると、なかなかそれらしくなる。
 飾るにあたって、飾り始めの時期や、片付ける時期などを調べてみた。なるほど、四季折々のしつらいには、施すことによって季節を意識するという効果があったらしい。しきたりというのも無駄ではないようだ。
 思えば、今まであまり季節や節日(シチビ)を大切にしてこなかった。季節の折り目に人々がすることには、やはり理由がある。正月に訪れたところはどこも中味汁で、こんな家庭があと何軒あるのかと思ったりもしたが、正月にこぞって中味汁を食すのもまた、文化なのかもしれない。
 私がお正月のためにかけた費用はごくわずかだが、ワンルームのわが家は、一気に正月顔になった。
 数百円で迎えるお正月。今年は、例年より豊かな正月となった。
(伊良波(いらは)さゆき、役者)