コラム「南風」 自分自身を知る時間に


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 鳩間島での中学校卒業の3日前。番組で訪れていた民謡界の大御所・知名定男先生と出会い、私の八重山民謡の歌い手としての活動が始まりました。
 ある日、私のもとに首都圏のFM・NACK5というラジオ局で沖縄専門番組のパーソナリティーを務めないかという話が舞い込んできました。2年半も前のことになります。

 自分の言葉で何を語ることができるのか。不安を抱えたのを昨日のことのように思い出します。そんな番組も、多くのリスナーの方にメッセージを頂けるようになり、昨年10月で3年目を迎えました。喋(しゃべ)り手としての自信は出てきたのかと問われれば、今でも「ない」と答えます。それでも首都圏の土曜の昼を、波の音とともに楽園ムードへと変えてしまう25分間は、とにかくとても楽しい時間です。
 番組を一緒に盛り上げているミュージシャンのサカノケンさんとは番組を通じて出会いました。局もある、海なし県・埼玉の生まれ。一度も沖縄を訪れたことがなく、番組開始から数カ月たった後にようやく沖縄の地を踏むことができました。
 私が沖縄の表情を伝え、サカノさんが勉強していく。そんな内容で始まった番組ですが、放送回数を重ねるにつれて思うのは、私がサカノさんやリスナーの方々に沖縄について教えるというよりも、私自身が生まれ育った土地を知る時間になっているということです。
 沖縄は場所によって文化や風習が異なります。住んでいる時には見えてこなかったものが、今は不思議と感じることができるのです。
 パーソナリティーとしてはまだまだ私も勉強中の身ですが、話題のニュースや特集、月に1度、スタジオに三線を持ちこんで、電波に乗せてお届けしている民謡演奏など、これからも首都圏から「元気な沖縄」を自分の言葉で伝えていきます。
(鳩間可奈子(はとまかなこ)、沖縄民謡歌手)