コラム「南風」 成人式と着物


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 今日は成人の日。毎年「荒れる成人式」ばかりが取り上げられているが、私が成人式で一番気になるのは女性の振り袖姿だ。自分も4年前に成人式を終えた身だが、今日の成人式には毎年驚かされる。高さを競い合う「盛り」を重視した髪型、携帯やネイルにもよく用いられるデコ振り袖、極めつけは肩がはだけた「花魁」スタイル…。私はそうした人たちを批判する訳ではない。

「人と同じスタイルは嫌だ」「自分の個性を大事にした」。大いに結構だと思う。ただ、残念なのが着物本来の魅力を知らないことだ。
 私は2011年に「着物装いの女王・沖縄代表」に選ばれたが、着物について大いに語れるほど極めている訳ではない。それほど着物は奥深いものなのだ。
 私が着物に興味を抱いたきっかけは、首里城で魅了された琉球紅型の衣装だった。この衣装は関係者が中国にまで渡り、王朝時代の資料をすり合わせて復元されたものだった。当時の時代背景が縦糸となり、技術が横糸となって織り成されるのが「着物」なのだと思う。
 それから私の着物への情熱に火が付き、十二単の衣装を着るためだけに源氏物語の舞台となった京都の宇治にまで足を運んだ。今では源氏物語も物語に登場する女性をAKBメンバーに例えられるぐらい熟読した。
 近年、「着物」が若い世代にも関心が広がっているという記事を読んだ。リーズナブルで手軽に着脱ができることをうたい文句に百貨店が力を入れているそうだ。また海外向けの商談会で女性担当者が着物姿で対応すると好評だという記事もあった。着物の魅力が再認識されていることは大変うれしいことだ。
 成人式を迎えた皆さんには、今日という日をきっかけに少しでも着物に興味を持ってほしい。着物の絵柄一つ一つに物語があること、帯結びにすばらしい技が隠されていることを。
(伊波紗友里(いはさゆり)、ラジオ沖縄アナウンサー兼記者)