コラム「南風」 “沖縄は特別”の理由


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 『沖縄は特別』。ひと時の沖縄観光ブームが落ち着いたとはいえ、東京に住んでいると、まだそんな風潮を感じます。大学時代は「沖縄出身」と一言いえば友達が集まってきましたし、「沖縄のことだから」と出来の悪いレポートも先生が許してくれたこともありました。「沖縄」と言えば、笑顔に溢(あふ)れるのです。

 沖縄の気候は亜熱帯で植物も違えば紅葉や雪もない。王国だった歴史があり、アメリカ世の時代もありました。しかし、本土でも地方へ行けばそれぞれの特産物があり、言葉があり、祭りがあります。違いがあるのに、なぜ沖縄が特別扱いされるのか、実はよく理解できませんでした。
 昔、師匠の知名定男から、ある人に「沖縄だから何なのさ」と言われてけんかになったという話を聞きました。相手の真意は分かりませんが、自分にもその言葉をいつ浴びせられる日が訪れるのかとビクビクしながら、私は「沖縄は良い」と大きな声で言えずにいました。
 沖縄のおじー、おばーは「沖縄が一番」とひとつの迷いもなく言います。私の父は、本土で人が集まっているのを見ると「今ここで三線を持ってきて弾いたら盛り上がるだろうな」と常に自信満々です。いわゆる八重山病、沖縄病と言われる観光客も「沖縄は最高」だと言います。
 「沖縄の何が特別で良いのか?」そんな疑問を抱きながら、デビューして14年、首都圏で沖縄専門のラジオ番組を持って3年目。いつの間にか、自分も沖縄の自慢ばかりしていることに気がつきました。ラジオの放送回数が100回を超えても、沖縄の話題は笑いに絶えず、八重山民謡は唄うほどに奥が深い…。溢れ出てくる沖縄の明るさ! 強さ! そして、優しさ!
 私は、思うのです。沖縄の特別さは、うちなーんちゅの想(おも)いの強さなのだと。
(鳩間可奈子(はとまかなこ)、沖縄民謡歌手)