コラム「南風」 神の島 久高島


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 沖縄には、たくさんの聖地が存在する。その中でも神の島と呼ばれる久高島は、琉球の祖神アマミキヨが最初に降り立ち国造りを始めた地として伝えられ、五穀発祥の地でもある。歴代の琉球国王も久高島参拝を欠かさなかったといわれているほどで、現代に至っても琉球神話の聖地としてあがめられている。

 久高島には、「イザイホー」と呼ばれる祭りをはじめ、年間で30もの祭祀(さいし)があり、島の人々は神様と寄り添うように暮らしている。私も久高島の旧正月の行事に参加させていただき、1年の祈願を祝う「酌とり(しゃくとり)」の儀式を見せていただいたことがある。この期間には島を離れた人たちも必ず島に帰ってきて子供も大人もみんなが集い、島一丸となってその行事を執り行う光景を見て、本当に心を打たれた。「伝統を守り継ぐ人々の思いが、ここには確かな形として残っている」。そう感じた。
 島では人が死ぬと魂は海のかなたにある神々の国、ニライカナイに行き、神となって再び島に帰ってきて子孫たちを守ると信じられている。また久高島には、総有制という土地制度があり、土地は個人の所有という概念がない。砂一つも持ち帰ることは許されないのである。この土地制度によって、外部の資本乱入を防ぎ、島の存在自体を強く守り続けているのである。
 男性は漁へ、女性は畑で作物を育て、島の自然の恩恵を受け、そして感謝し、子を産み育て、命をつなぐ…。かつてはどこでも当たり前に行っていたことを今も大切に守り継ぎ、自然と共に生きている久高島は、歴史的にも文化的にも、そして精神的にもとても重要な役割を持った島なのではないだろうか?
 物も情報も溢(あふ)れる現代の中で、本当に守らなければならないものが何なのかをあらためて教えてくれる。そんな大切な島だ。
(山川杉乃(やまかわすぎの)、うみない美代表)