コラム「南風」 アロマセラピーの歴史


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私たちの暮らしの中には、常にさまざまな香りが存在する。香りというのは、実に面白いもので、私たちの身体や心へも大きく作用している。

 アロマセラピーと聞くと、香りをたいて楽しむものというイメージが強いかもしれないが、正確に言うと、ハーブなどの芳香植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)に含まれる薬理効果を利用し、体に塗ったり、芳香をかいだり、あるいは飲んだりする療法のことである。
 ヨーロッパでは、医療行為として正式な認知を受けている国も存在する。保険適用になる国もあれば、フランスでは医者の必須科目にアロマセラピーが取り入れられているほどだ。
 アロマセラピーの歴史をたどると、そのルーツは植物療法にあり、エジプト人に至っては紀元前3000年ころから、芳香植物をオイルに漬け込んだものを、治療に使ったり、儀式の際に薫香としてたいていたというから、驚きだ。古代ギリシャ人は、エジプト人から芳香植物の医学的知識を受け継ぐとともに、心理的作用がある事も発見したと伝えられている。この植物療法は、17世紀に化学療法が登場するまでは、私たちの健康を保つための唯一の方法だったのかもしれない。
 ここ、沖縄でもさまざまな薬草を生活に取り入れ、薬代わりに用いたと聞く。これだけ医療が発達する現代においても、自然療法が代替医療の一役を担っているのを考えると、私たちの祖先が、長い時間と経験の中から、植物の持つ不思議な特性や薬効に気付き、そして上手に生活の中に取り入れ、継承してきてくれた事に心から感謝する。
 植物は本当にすごい力を持っている。食べる事で体へ良い効果を生み、香りでは人々を魅了す。生命の力は未知であることが、私の植物への探求心をくすぐるのかもしれない。
(山川杉乃、うみない美代表)