コラム「南風」 「祖母たち」の誕生日


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 「この大統領は長いこと頑張っておるな」と、テレビに映るオバマ大統領を見て感心するのは、父方の祖母。ここ5年ほど病院で過ごしましたが、今は食欲旺盛。口の達者さでは、家族の誰も敵(かな)いません。

 3月5日は、鳩間家にとって大切な日。祖母たちの誕生日です。「たち」と表現したのには理由があり、ご紹介した父方の祖母と、母方の祖母がなんと一年違いで同じ誕生日。互いに住む島が違うので、言葉も通じにくく長話はしませんが、お年寄り同士、耳の遠さは問題にならない様子。何だかんだと会話が成立するのが見ていて面白いです。
 祖母らを見ていると、父や母が違う角度から見えてきます。親から子へ、子から孫へ、代々受け継がれてきたものに諦めて開き直ることもできれば、大事にしていこうと思うこともあり、そこから自分の立ち位置も見えてくる気がします。
 祖母たちの、その長い月日を経てきた小さな身体の懐は、見た目に反して広く深く、多くの子孫を受け入れてくれます。そして、生きる力を蓄えた知恵にはいつも教えられることばかりで、何よりもその年齢という、家族の誰もが越えられない壁には「たくましさ」とユーモアが彩られており、それが私たち孫世代をたまらなく魅了するのです。
 世代の違いからのぶつかりもありますが、それを乗り越えて得られるものは本当にかけがえのないもの。どんな楽しみにも勝るものだと、私は感じています。祖母たちといると、私はとても幸せです。少しでも長生きしてほしいです。
 昨年は、そんな祖母たちの誕生日に記念として、三世代で作ったCD『家人衆の響き』を発売しました。ぜひ聴いてみてください。
 2月まで私が唄っていた沖縄のホームソング『ボクのテンプス』のおまじないを唱えながら、今日も私は、祖母たちの健康を願います。
(鳩間可奈子、沖縄民謡歌手)