コラム「南風」 スクラム釜石


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 あれから2年。ラグビー関係者が気に掛ける街、岩手県釜石市。釜石と言えば、日本選手権7連覇を果たし、かつて「北の巨人」と呼ばれた新日鉄釜石のホームタウン。まさにラグビーどころ。この震災で甚大な被害を受け、現在復興途上。

 そんな中でもラグビー文化はたくましい。栄華を誇った新日鉄釜石、現在は地域密着型クラブチームに生まれ変わり、トップリーグ入りを目指す。その名も釜石シーウェイブス(SW)。選手も被災者でありながらボランティア活動に尽力。チーム活動再開も、被災後のクラブ経営はもちろん厳しい。その釜石SWを支援するのがスクラム釜石。
 伝説的な司令塔で元日本代表の松尾雄治らV7戦士を中心に、「やはりラグビー」ということで立ち上がった。SWの活動が釜石、岩手、東北を元気にするとの思い。往年の釜石ファンを起点にその活動が全国的に広がっている。
 新日鉄釜石には伝説のトライがある。昭和60年の全国社会人大会決勝、神戸製鋼との戦い。後ろにゴールラインを背負った状況から、延べ13人がつないだ95メートルゲインのトライ。ミスで招いたピンチを、何とかしのぎボールを奪い返す。前に進めないなら、後ろにいる仲間へ。前に敵がいないなら真っすぐ前へ。相手につかまったらサポートしている仲間へ。自分でいけると思っても、無理せずフリーの仲間へ。激しい神戸のディフェンスに対し、フォワードとバックスが一体となりボールをつないだ。
 現在、ラグビーを通じた地域再興を目指している釜石市。市は復興計画に2019年日本で開催されるワールドカップ(WC)の会場誘致を明記。同市ともネットワークを結ぶ沖縄市も活動を支援。WCは壮大な目標設定。13人つなぎトライのように、ピンチをチャンスに。夢はきっと実る。全国に仲間がいるのだから。
(喜瀬典彦、県ラグビーフットボール協会広報委員長)