コラム「南風」 身近な大気汚染


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 最近、国の環境基準を超過した数値が観測され、テレビをにぎわわしているPM2・5(Particulate Matter 2・5)だが、県民は中国からの越境汚染という認識しかなく、その危険性を身近には感じてはいない。同じPM2・5であるが、道路工事から排出される粉塵の危険性については、市民は知るすべもない。

その危険な物質を排出しないように努めるべき工事会社は、その危険性が目に見えないものであるだけに、法に触れていても守られていないケースがある。それが、アスファルト切断に伴う粉じんである。その危険性は、科学的にも証明されており、国内の大気汚染防止法の基準を超過している。
 PM2・5とは、直径が2・5マイクロメートル以下の超微粒子の事である。大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であって、その粒径が10マイクロメートル以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子である。PM2・5は、ぜんそくや気管支炎を引き起こす。気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きい。
 身近な危険性と指摘したアスファルト舗装版切断工事に伴う汚泥(油分まじり)やパウダー状の粉じんは、研磨切断時の摩擦熱により固形油として結合力を失ったアスファルト成分から、発がん性物質ベンゾ「a」ピレンをはじめとする多くの多環芳香族炭化水素が溶出する。この物質は、人を含めた生態系へ悪影響を及ぼし続ける。降雨等によって河川や海の低泥に堆積し、水性動植物体への影響が懸念されている。
 沖縄県においても環境汚染が進んでいる。観光を産業にしている沖縄県は、足元を見るべきと思うのは、私だけであろうか。良識ある決断を県にお願いしたいものである。
(玉城常治(たまきじょうじ)、T・WIN社長)