コラム「南風」 四季を感じて


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 最近よくクシャミが出ます。この原因は花粉なのか、黄砂なのか、はたまたPM2・5なのか。そこに『煙霧』という初めて見聞きした自然現象が加わって、もはや原因を特定することはできません。私は総じて花粉症と言うことにしていますが、せっかくの春が楽しめずに、今年は少し寂しい思いを抱いています。

 仕事の場を関東へと移し、横浜へ引っ越しをして、3度目の春。こちらの気候は四季がはっきりとしていて、今更ながら「これが四季というものか」と理科の課外学習をしている心持ちです。
 ここぞとばかりに盛り上がった短い夏を終えると、鈴虫やツクツクボウシが鳴き始め、冷たい風が吹き込みます。たくさんのおいしい食べ物と夕焼けに色とりどりの木々が映える、そんな秋に心をとらわれているうちに長い冬が到来。沖縄にはない「冷たい空気」に肩をすくめ、背中を丸め、クリスマスやお正月を迎えます。天気予報の雪の結晶や雪だるまマークを小さな楽しみとし、肩凝りや乾燥に悩み、寒いながらに毎日を忙しく過ごしていると、ようやく春を告げる梅が咲き始めるのです。
 甘い香りやちょっとすっぱい香り、宙を這(は)うような見事な枝ぶりにかわいらしい蕾(つぼみ)と花をつける梅は、私のお気に入り。そこから一気にジンチョウゲ、ボケ、菜の花、水仙、雪柳などと花が咲き乱れます。そして桜が咲くと「春だぞ~。みんな出てこ~い」と叫びたくなるような、満開の白い花が電車から眺めるとポッ、ポッと。街全体が息を吹き返していく様は本当に感動ものです。
 先日、歌碑が建立された新「安里屋ゆんた」。さらに新しい歌詞が生まれていますが、その中でよく歌われる「春夏秋冬緑の島よ」という歌詞。何とも説得力に欠けると思いつつも、やっぱり常夏な沖縄は好きです。
(鳩間可奈子、沖縄民謡歌手)