コラム「南風」 石垣島の風


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 「着いたー」「やっぱり暑いね~風が暖か~い」
 沖縄本島から、さらに南の島。新しいアルバムの記念ライブのため、石垣島に飛んだ。
 1月の終わりの日。5度目に足を運ぶ石垣島の空は、燦々(さんさん)として、風はゆるやかに暖かい。今夜の演奏を楽しみに、沖縄本島からミュージシャンたちと一緒にやってきた。

 「貴子さーん」「また、今回新しいアルバム出ましたねー」。ゆったりと喜ぶその声は、毎回、私たちのライブを企画してくださる佐久川さん。ジャズが大好きで応援会長のような存在だ。島でライブができるようにと、ミュージシャンたちを支え、いろいろな準備にご苦労、奮闘されている。ジャズファンの仲間たちの温かい気持ちを受け取って、私たちも活気づく。
 今回のメンバーは、ギター「知念嘉也」、ベース「西川勳」、ドラム「川原大輔」のトリオ。皆、気さくでいて、音楽にまじめに向き合い、それぞれの愛嬌(あいきょう)のある持ち味を生かしながら互いにサポートしあうすてきなメンバーたちだ。
 会場に行く前に、西川勳さんの親戚の食堂に立ち寄り、八重山そばを食べる。
 「おーりとーり」、本島でいう「めんそーれー」と書かれたアーケードの中に、ライブ会場「メガヒットパラダイス」がある。久しぶりの会場の香りに和みながらも、緊張感とワクワクで胸が躍る。ステージは、トリオの演奏からスタート。観客との近いステージが気持ちを一つにする。応援の声に足取りも弾む。
 途中、ミュージシャン仲間のフルート奏者・西仲美咲さんも加わってセッション。ファンの声援と、バンドのリズムに乗り、自然と気合が入る。会場の皆との共鳴によって、私たちの奏(かなで)がいっそう前へ前へと乗ってゆく。
 まるで、石垣島を飛んでいるかのように…。
(安富祖貴子(あふそたかこ)、ジャズ歌手)