コラム「南風」 君たちの時代


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 名護市のシンボルであるピンプンガジュマルの横にある公園には、名護にゆかりのある人物の碑が二つあります。歴史上の人物と言うことで敬称は略しますが、一つは思想家で日本共産党創設メンバーの一人である徳田球一のもの。もう一つはゾルゲ事件で投獄され獄死した宮城与徳のもの。いずれの碑も存在は知る人ぞ知るというところでしょうが、今回触れたいのは宮城与徳の碑にある言葉です。氏は画家でもありながら、戦前の軍国主義の空気が覆う時代を駆け抜けながら、親族に「これからは君たちの時代がくる」というメッセージを残したそうです。

 「君たちの時代」と言い、未来を指向するセンスに魅了されます。言葉の力はすごい。さて、歴史の中で俯瞰(ふかん)してみると、今という時代はどう位置付けられるのでしょうか。私は立ち位置確認の勉強中です。
 話題は飛躍してしまいますが、筆を進めながら時代というキーワードで中島みゆきの「時代」の歌詞がふと頭をよぎりました。「まわるまわるよ時代はまわる~」。多くのアーティストがカバーしていますが、1975年の曲だそうです。宮城与徳と中島みゆきを並列に論じるのは乱暴ですが、できることなら、お二人と直接会ってオリオンビールでも飲みながら話をしてみたい衝動に駆られませんか。がじゅまる樹の下で。
 私たちは時代の空気というバトンを次の世代に渡していきます。社会の制度設計が変革されていく時、われわれ個々の大人が何を受け取り、また何を渡していくのかよく考えなければならないと思います。どうしましょう。
 ナンクルナイサァ、ですか。単に座しているだけでは、ナンクルもならないと思います。できれば「リカー、スンドー」の後で、ナンクルの神様にはお任せしましょう。
(末吉司、NPO法人HICO理事長)