コラム「南風」 チャンピオンズ合宿


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 それは、ひょんなことから話は始まった。「二人を、一緒に練習させようぜ?」。この二人とは、今高校ウエート界を震撼(しんかん)させているスーパーヘビー級のライバル同士。豊見城の知念光亮と、富山の村上英志朗の両選手である。数々の全国大会を、日本高校記録で差し合ってきた。

試合だけではもの足りぬ。ならば一緒に練習をと、気の合う指導者らの立ち話から、この自費合宿は生まれた。全国からも続々と集まった。
 今年5月には、兵庫で第1回が開催された。気が付けば、そこには全国大会で優勝したチャンピオンも7人いた。いつしか「チャンピオンズ合宿」と名付けられ、第2回は名護市嘉陽で行われた。ジュゴンが泳ぐ大浦湾を背に、ビーチトレーニングから始まる。50キロから140キロの選手まで、走る・転がる・跳ぶ・泳ぐ。トレーナーは、幼なじみのビーチの達人。小さい選手にも大きな選手にも、ハンディなしに同じメニューを課す。動く距離も、こなす回数も、ペナルティーも一緒だ。容赦ない。砂に足を取られ、自分の身体もなかなか自由に動かせない砂浜。全身砂だらけ。肩で息をしても、全然間に合わない。それでも、さすがチャンピオンズ。決して諦めることもせず、懸命についていった。そして、われわれ指導者も選手の熱き情熱を感じ取った。
 1964年東京オリンピック聖火リレーは、沖縄から始まったという。オリンピアで採火された灯は、11カ国の国々を巡り、沖縄にやってきた。そして県内を巡り、嘉陽の地で1泊し、本土へ旅立って行った。オリンピックを真剣に目指す熱きチャンピオンズと聖火宿泊地の嘉陽。最高のシチュエーションだ。7年後の東京オリンピックに向かい、約半世紀の時を超え、あの聖火のように沖縄から東京へ。燃えろチャンピオンズ。あの、聖火のごとく。
(金城政博、豊見城高校ウエートリフティング監督)