コラム「南風」 至福の時間


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 人と話をするのが好き。もっと言えば、話を聞くことが好きです。
 ラジオの仕事で、初めて1人で担当させてもらったのが、ラジオカーに乗って県内あちらこちらにお邪魔して話を伺うリポーターでした。月曜から金曜の早朝からお昼にかけて、そして土曜日の午前中から午後まで放送するワイド番組の中で、指定された時間帯に様々な職種の方、幅広い年齢層の方たちにマイクを向けました。

 リポート時間は基本5分。もちろん生放送で、インタビュー形式で進めなければいけないので、放送局のスタジオから「マキさ~ん」とお呼びが掛かるまでの時間が、相手の方を取材する大切な時間となります。
 そして、その時間が、私にとって何より楽しみな時間だったのです。
 特に、アポイント無しで、その場に行って出演いただけるかどうか交渉する際のリポートでは、話を聞きたいなぁと思った方の所へ、そろ~っと様子を伺いながら少しずつ距離を縮めていきます。その時のお互い緊張した感じから、相手のことを知ろうとちょっとずつ歩み寄って、次第に緊張がほぐれいく感じがとても楽しかったのを覚えています。
 早朝、甘い香りが漂う店内で焼きたてのパンを並べているお姉さんに、揚げたての天ぷらをお土産にもたせてくれた商店街のおばちゃん。海を眺めながらお弁当を食べている作業服のお兄さんたちに、看板娘として長年店を守っているおばあちゃんまでと、数えきれないほどの突然の出会いの中でいろんな話を伺えたことは、私の人生経験においても、とても貴重な経験となりました。
 この仕事をきっかけに、人との出会いをより楽しみに、そして話を聞くことで尊敬し学ぶことを教わりました。本当に感謝です。
(石底マキ ナレーター、パーソナリティー)