コラム「南風」 障害理解の方法


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 自分以外の誰かを理解することは、家族であっても親しい友人であっても簡単なことではありません。ましてや障害となれば、それを理解することはとても難しいことです。現在私は琉球大学大学院の人間科学分野で「障害理解」をテーマに研究を進めています。他者を理解すること、そして偏る考えを持つことなくより正しく障害のことや障害を抱える人々を理解するにはどうしたら良いのか、その方法について深めてゆきたいという思いからです。

 障害理解には主に二つの方法があります。車いすやアイマスクなどを用いた「疑似体験」と、社会の中で起こる差別的な慣習の本質を理解し、何をすべきかを明らかにすることを目標に行われる「障害平等研修」です。「体験」では主に身体障害への理解が中心となり、目に見えない精神の障害や、体の中の疾病などからくる内部障害等の体験をすることはほとんど不可能です。これに対し「平等研修」は偏見や差別を生み出す社会について考える機会なので、何の障害と限ったことではありません。性、国籍、HIV、同和問題など、あらゆる差別を生み出す社会と自分自身の意識について考えるための学習機会となります。体験教育は「大変」というマイナスイメージだけを植えつける機会だとして批判する声も出ています。しかし私はこの二つの手法(体験で知りその一歩先を考える機会と、本質的な問題を考える機会)が並行して行われるのが望ましいと考えます。
 誰もが暮らしやすいユニバーサル社会は理想ですが一足飛びにはいかないのが現実です。今あるバリアーや偏見を知り、その上でバリアーを取り払っていく、バリアーを作らないためにはどうしたら良いのかを考えること、そして体験指導者自身が偏見を理解し体験教育を行うことが重要な鍵なのではないでしょうか。
(小林学美(こばやしまなみ)、天久台病院 精神保健福祉士)