コラム「南風」 こどもの緩和ケア


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 私の長男は病名の診断がついた時から、主治医から「いつ何があってもおかしくはない」と言われていましたが、その言葉通りに生と死の間を綱渡りする状況が多くありました。今度こそ駄目かもしれないと思うような時を何度も超えながら、東京の病院へ転院・治療を受けるなどして、ようやく病状の安定を得て、在宅療養へと向かいました。

 そんな長男なりの落ち着きをみせた暮らしの中で、この子を失いたくないと強く感じました。失いたくないと感じれば感じるほど、その可能性が少なからずあるのだということを逆に思い知る状況の中で、病状が安定している今だからこそ、この子に万が一のことがあった時の対応について相談したい、と主治医に申し出ました。
 しかし、そう申し出はしても、失うという経験をしていない私は、看護師としての経験と知識をもってしても、何をどう相談し、何を決めておけばよいのか、今思えば全く見当違いな相談しかできませんでした。この相談を持ち掛けた際、主治医は長男の状態をターミナル(終末期)ではないと言いました。「いつ何が起きてもおかしくない」「覚悟はしていて」と告げられる一方で、ではいつになったら死の準備をする援助が受けられるのかと戸惑いました。それから1カ月とたたぬうちに長男は急変し、死を迎えます。
 現在、緩和ケアは終末期に限らず、提供されることが推奨されています。死と背中合わせに生きる重度障害のお子さんに対する緩和ケアの必要性も、訴えられるようになってきました。残された期間はまだまだあるのかもしれない、少ないのかもしれない、どちらの可能性をも直視したうえでできる限り実り多く、尊厳ある人生を、その子にも家族にも過ごさせてあげること。それが小児の緩和ケアだと思っています。
(福峯静香、NPO法人療育ファミリーサポートほほえみ理事)