コラム「南風」 うり、ゆーしったいやさ


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 元気なオバーたちに囲まれ、両親・親戚の方言が飛び交う中で私は育った。幼いころから、何度も言われてきた。普段から注意されているのに、自らの不注意で失態を招いた時に、よくこの言葉で戒められた。走るなと言われながらも、狭い部屋の中で駆けずり回り転んで血を流したり、片付けろと言われても大丈夫とたかをくくり、大事なものを無くしたりと…。「うり、ゆーしったいやさ」

 指導者になった今、私もいろんな言葉で部員を戒める。「ほら、だからいつも言ってただろう? 言うことを聞かないから、そんな結果になってしまうんだ」 「ゆーしったい」は、使うタイミングとニュアンス、そして絶妙な間合いが実に大切である。
 時と場合によっては、生徒の失敗を望む時がある。言っても聞かない、注意散漫な時に、失敗を通して「気づき」を促し戒めたいからだ。「先生、次の試合はこの重量から行きたいです」「ダメだ、練習もしてないくせに」「失敗した? うり、ゆーしったい」。あの失敗に気づいたから、今の自分があるんだと、その後でっかく成長してほしいのだ。
 しかし、昔こんな部員がいた。練習大嫌い、試合大好き。架空と思われる冠婚葬祭が実に多く、それを理由に練習を休みたがる。「先生、次の重量はこれで行かせてください」「ダメだ、練習もしてないくせに?」「絶対、大丈夫です」。私は失敗して帰ってくる彼の姿を期待した。だから練習は大事なんだと、今日こそはガツンと言って聞かせよう。彼の試技の終了を告げるブザーが鳴る。「先生、やっぱり成功しました。ありがとうございました」「う、うん、良かったな」。きっと、天国のオバーたちも笑って言ったことだろう。「うり、ゆーしったいやさ。教育や、ジコームチカサンドー(とっても難しいよ)」
(金城政博、豊見城高校ウエートリフティング監督)