コラム「南風」 沖縄にとっての「おくりもの」


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 本土の業者さんとのお話で、時期時期に「沖縄って贈り物とかお返しに、お米なんですね」という反応をよくいただきます。沖縄で生まれ育った私からすると「え? 違うんですか?」と逆に尋ねてしまうこともありました。今でこそ、商品もさまざまになり地域で異なる贈り物ですが、沖縄でお米が定番になったのは、年齢問わず毎日家族が食べるものだからというのが一番の理由なようです。

 八十八歳の米寿祝いだと、お米にまつわる習慣などもあるのですが、それ以外の理由であれば、まずそれかなって私も思います。「毎日のもんだのに、米が良いさ~。おいしいのからちょうだい、ねぇねぇ」。その言葉がすごく温かくて好きでした。聞くと、沖縄で定番のツナ缶も、本土から見るとちょっと驚く贈り物なようですよ。お米やツナ缶などの共通点。そこで感じたことは、お中元やお歳暮などの贈り物、もちろん普段食べないような珍しいものや高価なものもアリですが、ここでは逆に「毎日食べるもの、毎日使うもの」に焦点を当てているのが分かります。その違いの中にある心遣いに、なんとなく温かくなりました。
 毎日のものだから助かるでしょう?という発想プラス、おいしいものを贈りたい・良いものだから薦めたい。そんな気持ちを込めるものに、お米はまさにぴったりだと思います。「おいしいね」とこぼれる笑顔は、贈り主も頂いた側も、それを作る人・届ける人もうれしくなるものです。
 「お米1粒には7人の神様が宿っている」と言われています。毎日家族が食べるお米。日本の、沖縄の食卓を支えるお米。贈った先のご家族が、新たな1年を幸せに過ごせるように、その1粒1粒に宿る神様たちにそんな心と願いを託すような、そんな贈り物としての思いが、お米にはあるのではないでしょうか。
(渡久地奈々子(とぐちななこ)、五ツ星お米マイスター)