コラム「南風」 災害時のバリアフリー


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 3・11の東日本大震災は未曽有の大災害とも呼ばれ多くの犠牲者が出てしまいました。復興が進んだとはいえ、苦しい思いをされている方がまだたくさんおられます。1日も早く心穏やかに過ごせる時が来ることを祈るばかりです。私の親戚や友人にも被害に遭われた方がおり、私自身は当日群馬県に出張中に震度5強の揺れを初めて体験し底知れない恐怖を味わいました。

いつもあたり前に使っている携帯電話の不通や、東北だけでなく関東広域で水道管の破裂による道路の通行止め、寒い時期に暖房も使えない輪番停電、お店の品切れやガソリンスタンドの休業、思いもよらない不便と不安な経験をしました。今年の台風は東京の伊豆大島やフィリピンなどで大災害を引き起こし、いまだ心配な状態が続いています。
 防災訓練は火災の想定が中心だったものに、地震、津波などを想定した訓練も加わるようになってきました。ところが、避難訓練や避難所はバリアフリーなのでしょうか。3・11の災害時、車椅子の方やそれを介助する方が逃げ遅れたり、避難所では足の不自由な方用のトイレが無かった、目や耳の不自由な方に必要な情報が行き届かなかった、認知症や精神に障害のある方たちが突然の集団生活の場に馴染めず避難所を出て迷子になり路上で凍死してしまったなど、胸の詰まるような二次被害の報告もあり教訓となりました。
 避難訓練ではまず「誰もが逃げられる」順路や間口の確保と誘導が必要です。「見える情報を声に」「聞こえる情報を見える形に」する気づきや声かけの訓練も大切です。避難所は、そこに集まるだろう人を想定した通路やスペース、備品の確保が重要です。「万が一の時に命を守る」そのための予算は惜しむものではないはずです。ご自宅も大丈夫ですか? 家族と一緒に確認をしておきましょう。
(小林学美、天久台病院精神保健福祉士)