コラム「南風」 在来種と言われる豚を考える


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 野生動物を捕らえ家畜化する中で、初期に家畜化された動物は各地に伝播(でんぱ)し民俗文化と融合し独自の家畜文化を生み出しました。18世紀の産業革命以降には家畜も大量生産、大量消費、規格商品化、近親交配による同一化と斉一化、経済形質を選抜した品種造成が進められ、全世界へ伝播し、経済価値観と共に多くの地域の家畜が影響を受けました。その影響を受けないか最小限にとどめ、地域の飼育形態を保ち生き延びている家畜群が在来家畜です。

 日本の在来牛を活用した和牛は外国種による交雑、混乱期を経て改良され、1944年に産業品種として認定されました。和牛は在来種ではなく産業種なのです。
 沖縄の豚アグーも外国種が交配された豚であり、毛色は黒いが東アジアに存在する在来豚と全く違う体形と体質になっています。沖縄の大正期の写真の豚とも似ていません。戦後、交雑種の一部が保護され、近年のブームと共に再び県内に散らばり、西洋豚と交配を重ねた豚が現在のアグーの原種となっています。
 在来種を畜産物として扱う場合、トリプルスタンダードが必要です。つまり、在来種基準、品種基準、商品基準です。混乱している品種の整理は、雄方が不明なミトコンドリアDNAの分類だけではできません。
 商業ベースとしての安易な言語の使い方で「在来」「純系」の文字が飛び交い、在来種と品種と商品の区別が需要者に分かりにくく、情報社会の中で100年前の和牛の混乱期よりさらに混乱状態になっています。現場を知らない学者はサンプルを求め、一部のサンプルでアグーを在来種として論文を書こうともしています。
 アグーを産業豚として認知させたことは重要な成果です。品種成立と基準整理をし、需要者側から虚偽表示問題と同一視されることを拭いさることが必要であると考えています。
(高田勝、沖縄こどもの国専務理事・施設長)