コラム「南風」 三びきのコブタのほんとうの話


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 読み聞かせ会で、「三びきのこぶた(イギリス昔話)に出てくるオオカミは優しい? それとも怖い?」の問い掛けに全員が「こわーい」との返事です。なかにはなぜこんな分かりきったことを聞くのかと、いぶかしげな顔をする子もいます。私は、声を落として子どもたちの顔を見回しながら、もっともらしい声で切り出します。

 「実はね、みんなが知っている三びきのこぶたの絵本に出てくるオオカミのウルフさんがね、あっ、オオカミの名前、ちゃんとあるんですよ。アレクサンダー・T・ウルフって言うの。そのウルフさんがね、『俺はちっとも悪くない。誰も本当の話を聞こうしない。ひどいよ。俺の言い分も聞いてくれ』ってね。きょうはウルフさんの言い分を書いた絵本を読みますね。それでは『三びきのコブタのほんとうの話』(文/ジョン・ジェスカ 岩波書店)の始まり、始まり」
 子どもたちは興味津々な前置きに身を乗り出しました。読んでいる最中、子どもたちから「へぇー」「本当の話かな」などつぶやきが聞こえます。読み手の私もわくわくします。最後のページ、ウルフが読者に訴えます。「…そういう訳なんだ。これが正真正銘の本当の話。俺は悪いことなんか一つもしてやしない」と。
 またまた子どもたちに聞きました。「オオカミさんのこと、考え直してみる? 優しい? それとも怖い?」。やや間を置いて「やっぱり少しこわーい」ですって。オオカミさん、かわいそう。
 11月29日、伊江小学校での「読書実演会」低学年の部は絵本の世界で、どっぷり遊びました。子どもたちの笑顔から元気をもらった楽しい実演会でした。
 三びきのこぶたをパロディー化したこの本は、高学年に読むことが多いのですが、低学年でも十分に楽しめることを再確認。
(平良京子、県子どもの本研究会副会長)