コラム「南風」 相続


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 「毎回楽しみにしてるよ」との声を励みに、7月からスタートした本コラムも今回で最終回となりました。最後のテーマとして最近マスコミに取り上げられる機会が増えてきた「相続」について考えてみたいと思います。多くの人が「うちは財産が無いので心配する必要はない」と考えがちですが、本当にそうでしょうか。

 2015(平成27)年1月以降に発生する相続から、基礎控除額の減額と税率の変更により相続税の増税が決まりました。これまで納税の必要なかった人でも納税対象となる可能性が出てきたのです。財務省によりますと11(平成23)年の死亡者数は約125万人で、そのうち相続税の申告(納税)をした人は約5万人の4%でしたが、新制度では大幅に増えると試算されています。
 一方、家庭裁判所での相続に関する相談件数は約21万人(17%)と年々増加しています。また、意外に思われるかも知れませんが、5千万円以下の財産での相談件数がそのうちの76%も占めているのです。財産が多くなくてももめているのが現実なのです。裁判に持ち込むまでではないもののもめているケースは、結構な数に上ることは容易に推測できます。
 残された家族が争わないようにすることが大切なのです。最近では「争族対策」と表現する人も増えてきました。ひと昔前ですと長男が全ての財産を引き継ぐことが当たり前でしたし、トートーメー制度などの習慣が残っている地域もあります。しかし、法的には兄弟平等に権利を有しますし、権利を主張する時代になりました。相続時に関係がこじれますと、その後の縁も途絶えることが往々にして起こります。そうしないためにも、財産の多い少ないにかかわらず、全ての人に関わる問題として捉える必要があるのです。
(慶田城裕、有限会社ライブアップ代表取締役)