コラム「南風」 人生の寄り道も


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 私の長男は、重度の障がいを持って生まれ、闘病の末1年と11カ月でこの世を去りました。
 時折、長男を思い、涙を流すことはあっても、それ程深く気分が落ち込むということもなく、長男の死後、間もなく立ち上げたNPO法人で、療育ファミリーを支援する活動を始め、充実した日々を過ごしていました。

 それから3年後、五体満足で元気な次男(現在6歳)を授かりました。妊娠・出産した後、すくすくと育っていく次男の子育てもまた間違いなく、幸せを感じる時間でした。
 ところが、次男が1歳になり、保育園へ通うようになったころ、私自身に思わぬ変化がありました。夕方になり、保育園のお迎えへ行く時間になると、何の理由もなく、気持ちが落ち込み、涙がぽろぽろとこぼれるようになったのです。
 次男が健康にすくすくと育っていることは、とても喜ばしいことなのですが、元気に保育園で遊ぶ様子や、一緒に遊ぶお友達を見ていると、どうして長男は元気に生まれることができなかったのか、今なぜ、私のそばで生きていないのか、そんな思いが心の中にうずまき、保育園へのお迎えが私にとって一番の苦痛になっていました。
 そんな自身の精神的な不安定さを自覚した私は、抱えていた仕事のほとんどを人に任せて、自分の本当にやりたいことを自分のためだけにやってみようと思い、1年間移動カフェを営みました。
 次男が熱を出して保育園を休むことが多かったので、ほとんど営業はできませんでしたが、次男と共にリラックスして過ごす時間が、私にとっては必要な時間だったように思います。
 家族や仲間に迷惑も掛けましたが、おかげで心の健康を取り戻せたことから、そんな人生の寄り道も時には良いものだと感じています。
(福峯静香(ふくみねしずか)、NPO法人療育ファミリーサポートほほえみ理事