コラム「南風」 インフルエンザが流行しています


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 インフルエンザが流行しています。私の病院でも、受診する方が増えてきました。入院している患者さんもいらっしゃいます。今年は年配の方に広がっている印象がありますね。持病のある方や妊婦さんは、今からでも遅くないのでワクチンを接種して重症化させないよう予防してください。

 ワクチンも大切なんですが、古来から疫病を予防する最善の方法とは「感染している人に接触しないこと」です。そして、これは「症状のある人が外出しないこと」とほぼ同義だと考えてよいでしょう。
 しかるに、症状のある人が仕事をしない、仕事をさせないコンセンサスが私たちの社会にできているでしょうか?
 冬になると毎年のように流される総合感冒薬のテレビCMでは、発熱や上気道症状のあるビジネスマンや主婦が市販薬を内服してから(見かけ上では元気になって)出勤したり、買い物に出たりしています。そこには「風邪をひいたら休む」という発想は見当たらず、いかに日本社会が病んでいるかを見たようで寒気すら覚えます。言うまでもなく、彼らは自分のために休むんじゃなくて、社会を守るために休むべきなんです。
 インフルエンザの感染拡大を抑止する最善策は「症状のある人が自宅でゆっくり療養する体制」を社会的に構築することです。皆さんの職場には、症状がある人に「すぐに家に帰って、ゆっくり休みなさい」と命令する上司がいるでしょうか? そして、その上司は「君の仕事は私が調整するから心配するな」と付け加えることができるでしょうか?
 インフルエンザに限らず、感染症に強い社会づくりというのは、こうした危機管理のセンスにかかっていると思います。インフルエンザのシーズン入りをした今、皆さんの職場でも考えてみませんか?
(高山義浩(たかやま・よしひろ)、県立中部病院感染症内科地域ケア科医師)