コラム「南風」 10年後の沖縄の自然は


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 今のままの自然破壊が続けば、緑はまばらになり、遠目に土砂崩れをいくつも見つけ、ノグチゲラやヤンバルクイナは幻で、ヤンバルテナガコガネを探したいけど大木さえも見つからない。川や海は雨のたびに赤く染まり、サンゴは白化し、魚もいなくなる。立派な道には動物の死骸を見慣れて、広大な伐採地には外来種が仲間入り。

世界自然遺産になっているかどうか分からないけれど、残り少ない林冠に米軍機が飛び交い、チョウが吹き飛ばされる。鳥の声の代わりに、気持ち悪い騒音が森中に響き、演習による山火事が動植物を襲う。名前のないまま消えていった昆虫に出会いたかった。見えない海の中をわざわざ想像するはずもなく、基地の下に埋もれた命などもう忘れている。破壊を推進した年寄りでさえ「10年前の沖縄は自然豊かだった」と懐かしがります。豊かな森と美しい海は遠い昔話で、手付かずの環境のなくなった沖縄に魅力などなくなりました。
 大人になった子供たちは、自然のなくなったこの地で沖縄を知らずに生活します。虫採りする子は減りました。虫がいないから教えてあげることもできません。
 人はとてももろくて、お金や権力に心奪われ、子供たちの未来まで売ってしまいます。自分の子供の未来を思えないのに他の動植物に思いやりなんて持てなかったのでしょう。
 沖縄には沖縄の風景があって、沖縄の生き物がいて、沖縄の生活があって、沖縄の幸せがあって、それでよかった。
 ヒトは動物だから自然がないと生きていけない。10年後もヒトは今と変わらずやっぱり動物で、ヒトの子供もまた同じ。子供たちに残したかったのはこんな光景だったのでしょうか。他の動植物に思いやりを持つことができないのなら、せめて子供たちのために今を考えてほしいのです。
(宮城秋乃(みやぎあきの)、日本鱗翅学会自然保護委員)