コラム「南風」 働く人の食トレーニング


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 ことしの箱根駅伝は東洋大が2年ぶり、4度目の優勝となった。つないでいくタスキと爽やかな緊張感は新年らしく気持ちがよい。ラグビーの全国大学選手権では帝京大が5年連続優勝。2大学の優勝の陰には1人のスポーツ栄養士の存在があるという。

 「王者の食ノート」(島沢優子著、小学館)。スポーツ栄養士虎石真弥さんが、それまでは好きなものを食べていた部員たちの食生活に栄養学的な変革を起こし、より強いチームへと成長する過程で、同時に起きた摩擦や葛藤をも描いた実話である。
 少し内容を紹介すると、彼らは、もともと才能があり試合の戦略や技術の訓練中心で成果を残してきた。栄養の話を聞いても実践をしない。粘り強く、押したり引いたりのアプローチで徐々に自ら気が付いていく。
 自分で作成した目標に取り組んだ結果、体が改造され試合で動きが向上した体験から、自尊感情が生まれ、自分ならできると信じるメンタルが強化されていく。「Management By ObjectivesAnd Self Control」。ドラッカーの「目標による管理」食育版といったところか。
 働く私たちの食はどうか。2013年健康おきなわ21の食生活調査によると脂肪エネルギー比率は平均27・6%、朝食の欠食率増加、緑黄色野菜摂取量不足悪化。統計でなく若者のある日の昼食を見てみると―。カップラーメン、おにぎり、炭酸飲料。炭水化物ばかりの食事では思考力低下や疲れが取れにくい。
 職業人の何をどれだけ食べたらよいか学ぶ場が必要だ。労働内容も変化し、肉体労働、知的労働、特に感情労働の場が増えた。食べ物の心への働き「精神栄養学」の研究が進んでいるそうだ。あとは毎日が楽しみになる従業員食堂があったら幸せ!
(田港華子(たみなとはなこ)オフィスDEN代表)