コラム「南風」 生物多様性を学校教育に


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 私たちの吸っている空気はどこからやってきたのでしょう。毎日飲んでいる水はどうやってできたのでしょう。足元の土は何でできているのでしょう。適切な気温はどう調整されているのでしょう。

 そこにあるのが当たり前すぎて普段気にすることはありませんが、人類は例外なく全ての人が自然の恵みを受けて生きています。
 しかしその無頓着さから、目先の利益や快適さを必要以上に求め続け、今日まで自然を破壊してきました。人類は自然を破壊し地球を征服したつもりになっていますが、残念ながら人は自然がなくては生きていけません。
 人間が自然を自由に操れると勘違いしている例に、元の自然を破壊することの免罪符としてそこにあった植物や動物を移動して、新たな環境をつくるという行為があります。過去の失敗を反省することもなく何度も同じ過ちを繰り返し、自身の力を過信している姿はなんともおこがましい。私たちは自分たちの生息地を自ら破壊し狭めているのです。
 生きていく中で自然を学ぶ機会はたくさんあったはずです。しかし、欲に溺れた人間に不都合な真実は見えません。沖縄にはこれだけ素晴らしい自然があるのに、いったい何が足りないというのだろう。
 私自身は動物たちのために自然を保全したいと考えていますが、私たちが生きていくためには、自然に生かされている人類全てが自然の仕組みについて知る必要があります。親の思想に左右されずに子供たちが「生物多様性」や「生態系」の知識を得るには学校で教えるのが一番良いと考えます。理科や生物のほんの一部ではなく、それらを中心とした授業を行うのです。自然とは楽しく、美しく、大切なもの。大人たちが獲得できなかった「足るを知る」を得ることができるはずです。
(宮城秋乃(みやぎ・あきの)日本鱗翅学会自然保護委員)