コラム「南風」 小さなきっかけ、大きな広がり


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 私はいわゆる「ボシカテイ」というやつで育った。それも少しへんてこりんな。「ボ」は高齢者向けの配食活動やサロン運営に奔走し、「シ」はそんな「ボ」の仲間で、これまたへんてこりんな大人たちに囲まれていた。

 中学2年になった私は、時々お菓子を作り、母のサロンに納品するようになった。遊びの延長のようなものだったのだが、ある日それを、こわもてのおじいさんが注文したという。
「子どもが作るものにはごまかしがないからおいしい」。そう言って、かぼちゃのタルトを平らげたおじさんは、地場産業の研究者として有名なエライ先生で、今思えば母の師匠だった。
 同じころ、いろんなところへすっ飛んで行っては、素朴な、しかしとてもおいしい漬物だのまんじゅうだのを引っ提げてくるおばあさんがいた。その人は、他のどこでも売っていないそれを、仕入れた額に10円か20円ぐらい上乗せして売るのだが、さすがの子どもでもこれは分かる。あれではもうからない。母に話すと、それは直接教えてあげた方がいいとのことで、早速電話をかける。
 「そうね! ともこちゃんが言うなら、絶対そうだわ!」。そう言って電話の向こうで大笑いしている人は、有名な社会活動家で、今思えば母の師匠だった。
 食べ物の仕事に就いて10年以上がたった。もちろん面白いから、好きだから続けているわけだが、そのきっかけは、やはり「ボ」を含むこのへんてこりんな大人たちにあるのだと思う。
 子どもの小さなアクションやことばに気づき、寄り添い、認める。特に「認められた」という感覚は、その後の人生に大きく影響を及ぼすのだぁ…なんて知ったようなことが言えるようになったのは、実は今私が関わっている、不登校の中学生たちとの出会いだったのだが、その話はまた今度。
(今木ともこ、NPO法人沖縄青少年自立支援センターちゅらゆいフードプロデューサー)