コラム「南風」 チキンと宣伝


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 うちのチキンは沖縄一、いや日本一、いやいや世界一、旨(うま)い。世界数カ国しか旅していないが、今のところ間違いない(ブエコ調べ)。

 両親の営むチキンの丸焼き専門店で働きはじめたのは2年半前。100羽チキンを切り分けても平気な顔をしている母サチコに対し、数十羽切っただけで手のしびれを訴える。一度も風邪で休んだことのない父コウエイに対し、寝坊しては社長出勤。60代の両親に比べて技術も体力も半分、軟弱ヒヨッコな2代目だが、一つ誰にも負けないことがあった。それは「チキン愛」。
 もともとこのチキンが大好きだった私。お店で働くようになり、味はもちろん、両親の人柄も、お店に通ってくださるお客さまも含め、噛(か)めば噛むほど味が出るすごくいい店だと娘ながらますますファンに。
 この味わい深いチキンと両親のことをもっともっと広めたい。そんな想いから、広告業界で培った経験を基に大々的に宣伝をすることに。
 大々的にと言っても大きいのは予算ではなく、大口をたたく宣伝方法だ。小さいお店だからと宣伝まで小さくまとまっていてはつまらない。「浦添にある小さいお店の、それなりの味です」なんて言っていてもお店の良さは伝わらない。そう、「うちのチキンは世界一、美味しいんです!」。
 どこに行っても誰に会ってもPR。両親がコツコツ積み上げてきた味を一人でも多くの人に知ってもらうこと。それがヒヨッコ2代目にできる唯一の親孝行だった。
 「あなたが来てから2倍美味しい」。近所のおじちゃんがそう言ってくれた時は少しお店に貢献できた気がしてうれしかったが、どうやらおじちゃんはチキンを食べたことがないらしい。まだまだチキンと、いや、キチンと伝える努力が必要だ。
(幸喜ブエコ朝子、「ブエノチキン浦添」2代目)