コラム「南風」 ヒンコン<レンコン


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 私はいわゆる「食育ホニャララ」という資格は持っていない。そんな私に白羽の矢を立てたうちのボスは大胆不敵だとつくづく思うが、とにかく賽(さい)は投げられた。

 「那覇市子どもの居場所づくり支援事業」これが今、私たちNPO法人ちゅらゆいが那覇市と一緒に取り組んでいる仕事。家庭の事情や本人の個性など、さまざまな理由で不登校やひきこもりになってしまった児童の安心できる居場所をつくり、登校復帰や進学、あるいは社会へと送り出す。昨年の7月に開所した居場所は「Kukulu(心=くくる)」と名付けられ、私はそこで給食のおばちゃんを任されている。
 孤食や偏食なんて当たり前、満足に一日3食食べることもできない彼らに対しての食育。こりゃあ一筋縄ではいかないぞと腹をくくった私は、既成概念を取っ払い、かつて私がへんてこりんな大人たちにそうしてもらったように、とにかく彼らのありのままを認めるところから始めることにした。だって、信用できない人が作った食べ物なんて、怖くて誰も食べないでしょう?
 安心できない場所で食べるごはんなんて、おいしいわけがないでしょう。栄養バランスが整ったどれだけすばらしいごはんでも、しかめっ面で食べてはもったいない。まずはみんなで笑いながら食べることの楽しさを知る。彼らにはそこがスタートだった。
 これからの連載では、彼らと私の食べ物をめぐるドタバタ劇もご紹介していきたい。世間一般では超問題児と言われるような児童が、「レンコンのきんぴらが食べたいからKukuluに行こかな。」なんてかわいいことを言って突然やってくる。
 私たちは「ヒンコンの連鎖」を断ち切り、「レンコンのきんぴら」でつながるんだ。
(今木ともこ、NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいフードプロデューサー)