コラム「南風」 チキンとレジ前


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 世の中は空気でできている。あのブランドはセレブ御用達だとか、あの缶コーヒーは働く男の味方だとか、あの政治家は庶民派だとか、いろんなことが空気、人の持つイメージでできている。その空気のつくり方を広告業で学んだ私がチキン屋2代目として「美味(おい)しいチキン屋の空気」をつくるために活用しているもの、それはテレビCMの15秒でもラジオCMの20秒でもなく、「レジ前の30秒」だ。

 ツンとした人も偉い人もオジーもオバーも外国人も、レジの前ではただの人。肩書も年齢も関係なく、お客さまとスタッフとして1対1で向き合えるこの瞬間は最高のPRタイムだ。たかが30秒されど30秒。この時間活用こそ2代目ブエコ最大の広告戦略。使うのは自分の口だけ、予算ゼロ!
 うちのチキンはタレに2日漬け込んでいることや2時間かけて焼くから脂が落ちてヘルシーであること、食感を楽しめるようニンニクを粗みじんにしていること、食べ終えた骨で出汁が取れること。
 さらには店長コウエイが昔は某焼き肉のタレを売っていたこと。とにかくチキンだけじゃなく、お店の魅力を一つ知って持って帰ってもらう。そうして美味しさの理由や商品の背景を知ってもらえば、美味しいチキンがさらに美味しくなるに違いない!
 そんな思いで一人ずつ、一つずつ、コツコツ重ねたレジ前30秒接客。おかげで最近ではお客さまの方からチキンの美味しさを力説してくる「逆・レジ前接客」も増えており、「ただのチキン屋」から「こだわりのあるブエノチキン」へと空気が変わりつつあると感じている。このままお店が大繁盛し「レジ前30秒の接客術」という本を出版、売れに売れて夢の印税生活へ!という予定だが、その前にチキンと、いや、キチンと、2代目修行にいそしみたい。
(幸喜ブエコ朝子 「ブエノチキン浦添」2代目)