コラム「南風」 僕らは歩く「可能性」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 彼らはいわゆる「不登校」だったり「ひきこもり」ってやつなのだが、じゃあなぜこの、居場所「Kukulu」には来てくれるんだろう。理由はそれぞれあるんだろうけど、とにかく今日も「偏食キング&クイーンのおなーりー!」なのだ。

 かく言う私もかつての偏食クイーンで、ごま塩ごはんとゆで卵の白身で生きていた時代もあるほど。母の涙ぐましい(かどうかは覚えてない)努力により、大きくなるにつれ偏食は改善され、今やこの雑食系、鉄の胃袋と肝臓を持つまでに至る。
 とある児童の話。お母さんからは、エビアレルギーで、米、野菜、魚、香辛料は全て苦手と報告を受ける。なるほどその通り、昼食時間にはほとんど何も手をつけずゲームばかり。麦茶さえ飲めず、食べるのは持参したお菓子とジュース、インスタントラーメンだ。
 しかし毎日ほぼ残さず食べているのが一つだけ。「汁もの」である。そこにはたくさんの野菜が入っていても、例えば嫌いな先生が味噌汁にぷかぷか浮かんでいても食べてしまうほどの勢いがある。そしてもう一つの鍵が、「場」の雰囲気。とある児童の歓迎会で、にぎやかにお好み焼きを焼いて食べる。ふと見ると、エビを食べている彼を発見!大慌てで止めに入るが、キングはけろりと「は?アレルギーじゃないし。誰がそんなこと言った」とおっしゃる。その後も、わさび入りのロシアンたこ焼きを食べたり、市場で自分が選んだ魚でムニエルを作ってくれたり、手打ちうどんでは「職人」と呼ばれるほどだ。
 偏食の改善法として、本人の好きな料理に工夫をし、ほぼ無意識のうちに食べ慣れさせることはよくある。それに加え、私がKukuluで彼らから学んだことは、楽しけりゃ食うよ!ってこと。彼らの可能性や伸びしろに気づけば、大人はレッテルなんか貼らないんだろな。
(今木ともこ、NPO法人沖縄青少年自立支援センターちゅらゆいフードプロデューサー)