コラム「南風」 禁煙外来


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 開業してぜひやりたかったことの一つに禁煙外来があります。女性の喫煙率は約1割程度と男性より低いですが、かつて8割以上だった男性の喫煙率が5割以下に下がっているのに対し、女性の喫煙率は減るどころかむしろ増えている年代もあります。

 そして、産婦人科外来でも、妊娠中の方や乳幼児のお母さんでどうしてもたばこをやめられない方をみることがあります。お腹の赤ちゃんや子どものために、お母さんにはぜひたばこをやめるよう指導しています。でも赤ちゃんに悪いことが分かっていてもやめられないのがたばこです。たばこの依存性は覚醒剤よりも強いのだそうです。ニコチン依存症は薬物依存症の一つで、病気なのです。
 漂うたばこの煙には、たばこを吸う本人が吸い込む煙よりもたくさんの有害物質が含まれているということが分かっています。そして、その煙はかなりの広い範囲に広がります。空港の屋外喫煙所から17メートル離れたところで、たばこの有害物質を観測したところ、かなりの有害物質が検出されたというデータもあります。
 また、たばこを一本吸うと数時間も吐く息から有害物質が空気中に吐き出されます。喫煙者の衣服にもニコチンは付着しています。たとえ換気扇の下やベランダで吸ったとしても、一緒に過ごしている子どもは、自分で吸わなくてもたばこの害にさらされてしまうのです。妊婦さんや小さい子どもがいる家庭では、ぜひたばこによる健康被害を避けるために、家族みんなで禁煙することが大切です。
 禁煙治療は健康保険でできるようになりました。保険診療で治療を受けられる人は条件がありますが、自費で診療を受けたとしてもたばこを吸い続けるよりもお金の節約になります。自費か保険診療かにこだわらず禁煙外来を利用して禁煙にトライしてみてください。
(島袋 史、ゆいクリニック院長 産婦人科医)